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自然農薬について

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Lab(自習室)

特定農薬とは、農薬取締法にもとづき「人畜や環境に害を及ぼすおそれがなく、かつ防除効果が認められる」として国が指定した天然由来の防除資材のことです。現在、食酢と重曹(および一部の天敵、生物農薬など)が指定されており、これらは農薬登録を経ずに防除目的で使用できます。その他の自然農薬(木酢液、牛乳、唐辛子、ニンニク等)は効果が期待され広く利用されていますが、使用の際は各作物への影響を確認しながら自己責任で実施してください。

酢(食酢)(米酢、穀物酢など)

食酢を水で10~50倍に希釈してスプレー散布する。病害予防目的ではニンニク・唐辛子・石鹸を加えた混合液「ストチュウ」(酢・焼酎をベースに唐辛子やニンニクを漬け込んだ自家製農薬原液)を200倍程度に薄めて用いる方法もある。

酢酸の強力な殺菌作用でうどんこ病などカビ由来の病気を抑制し、根の活力を高め耐病性も向上させる効果。害虫を寄せ付けない忌避効果や抗菌作用もある(安全性と防除効果が認められ、重曹とともに特定農薬に指定済)。

例: イチゴやトマトのうどんこ病初期対策として酢を50倍希釈で株全体に散布。またキャベツ等への散布でアブラムシ忌避にも利用される。濃度が高すぎると葉を痛める恐れがあるため希釈倍率を守る。酸性が強いため金属製の噴霧器は腐食に注意。

唐辛子エキス(トウガラシ抽出液・タバスコ液等)

唐辛子(乾燥鷹の爪など)を焼酎や酢に数週間漬け込んで原液を作り、使用時に100~500倍に希釈して散布する。手軽な方法としては市販のタバスコソース50mlを水500mlに混ぜた原液をさらに200倍に薄めてスプレーする。散布前によく混ぜる。

辛味成分カプサイシンによる忌避・殺虫効果がある。特にカメムシやアブラムシに対して速効性を示し効果的。カプサイシンは昆虫やダニを遠ざける生物化学農薬として米国EPAにも登録されており、一部の病原菌抑制効果も報告されている(唐辛子酢漬け液は害虫や作物の病気予防にも有効)。

例: トマトやナスの果実を吸汁加害するカメムシ類や、葉に群生するアブラムシ対策として葉面に散布する。2~3日に1回の頻度で連続散布するとより効果が高まる。調製液は刺激が強いので、目や皮膚に付かないよう防護メガネ・手袋を着用する。植物によっては葉面がヒリヒリする薬害が出る場合もあるため、薄めの濃度から試す。

牛乳スプレー(生乳または脱脂乳)

牛乳を水で用途に応じ希釈して使用する(害虫目的なら原液~2倍希釈、病害予防なら5~10倍希釈が目安)。乾いた晴天日の朝に葉に噴霧し、そのまま乾かす。乾燥後に乳成分が葉面に残らないよう水で洗い流す。

アブラムシ、ハダニ、アリなど小さな害虫に対し、牛乳成分が虫の体表に膜を作って乾燥収縮し窒息死させる効果がある。また牛乳中の成分が抗菌剤となりうどんこ病などカビ病の繁殖を抑える効果も報告されている(10%濃度の乳液散布で粉状白菌病を抑制)。牛乳スプレーは植物の成長促進や栄養補給効果があるとの指摘もある。

例: レタスやキャベツの葉裏に原液に近い牛乳を噴霧してアブラムシやハダニを物理的に駆除する。イチゴやキュウリなどウリ科作物のうどんこ病予防には牛乳10倍液(乳濃度10%程度)を週1回程度葉面散布する方法が知られる。散布後は腐敗臭やカビを防ぐため水で葉を洗い流す。高温時は牛乳成分が腐敗しやすいので、夕方か朝の涼しい時間帯に行い、作物に乳成分を残さないよう注意。

コーヒー液・コーヒーかす

濃いめに淹れたコーヒーを冷まして、その液を霧吹きスプレーに入れて散布する。インスタントコーヒーなら通常の2~3倍濃度が目安。抽出後のコーヒーかすは捨てずによく乾燥させ、植物の株周辺や地表にばら撒いて使用する。

コーヒーには広範囲の害虫忌避・殺虫効果がある。ハダニ、アリ、センチュウ、ヨトウムシ(夜盗虫)などに対して有効で、濃いコーヒー液を散布すると害虫の体表に皮膜ができ乾燥によって収縮し窒息死に至らせる。またコーヒーかすを土にまけばナメクジやアリを遠ざける効果が期待でき、防虫忌避剤として働く。カフェインは一部の害虫に対し神経毒的にも作用し得るとの研究もある。

例: レタスやハクサイなど葉菜類の苗の周囲にコーヒーかすを帯状に撒き、夜間に活動するヨトウムシの侵入を防止する。ナスやイチゴで発生しやすいハダニに対して葉裏に濃いコーヒーを散布し防除する。コーヒー液は濃度が高すぎると植物に薬害(葉焼け)の恐れがあるため、最初は薄めに調整し、様子を見ながら濃度を上げる。噴霧後の沈着物がシミになる場合は、水で洗い流すとよい。

ニームオイル(インドセンダン油)

ニーム(インドセンダン)の種子から抽出された植物油を利用。市販のニームオイル製剤を用いる場合は製品表示に従い、水で約500~1000倍(濃度0.1~0.2%程度)に希釈して使用する。原液は油状で混ざりにくいので、数滴の台所用液体石鹸やエタノールを乳化剤代わりに加えて希釈液を調製し、葉の表裏に満遍なく散布する。

ニームの有効成分アザディラクチンは害虫の摂食や成長・繁殖を阻害する作用があり、ニームオイルを吸った害虫は食欲減退・脱皮不全を起こし最終的に死に至る。さらに昆虫はニーム処理した植物を嫌って食べなくなるため忌避効果も高い。これまでの研究で約200種もの害虫に効果が認められており、アブラムシ、ハダニ、コナジラミ、ゾウムシ類など幅広い害虫防除に利用できる。人や家畜、益虫には毒性が低いとされ(草食性の害虫のみを標的とし、ミミズや肉食昆虫、ミツバチなどには無害と報告)、環境に優しい天然農薬として注目される。

例: トマトやナス、キュウリなどのアブラムシ・コナジラミ防除に生育期を通じて7~10日おきに葉面散布する。キャベツ類のコナガやヨトウムシなど食葉性の青虫害にも予防効果が期待できる。即効性は低いが徐々に害虫密度を低減させるため、早期から予防的に散布するのが効果的。比較的選択毒性が高く天敵昆虫への影響も少ないとされるが、濃度が高いと薬害(葉焼けや開花抑制)の恐れがあるため規定濃度内で使用する。臭いが独特で強いため散布後しばらくはハウスを換気するなど配慮する。

木酢液(竹酢液)(木材・竹の蒸留液)

木炭を焼く過程で出る煙を冷却し液化して得られる副産液。市販の濃縮木酢液を用いる場合は200~500倍以上に希釈して使う。葉面散布・土壌潅水とも利用可能だが、必ず薄めて使用する(原液は酸性が強く植物に有害)。 ※自家製の場合、木材や落ち葉をドラム缶などで焼いて煙を冷やし採取する方法もある。

適度に希釈した木酢液は害虫忌避・抗菌効果を発揮する。200~300倍液を植物に散布するとアブラムシやセンチュウなどの害虫が寄り付かなくなり、さらに土壌に200~400倍液を施用すれば有用微生物の増殖が促進され病原菌の活動が抑制される(結果として作物の生育促進・病気予防につながる)。一方、高濃度(~100倍以下)では強い殺菌作用があり雑草さえ枯らすが育てている作物も枯死するため注意。消臭・防腐効果もあり、畜舎の臭気対策などにも利用される。

例: レタスやイチゴ栽培で、木酢液300倍液を葉面散布してアブラムシやネコブセンチュウの被害を予防。また定植前に木酢液を300倍程度に薄めて土壌全体に散布し、土壌病害の発生軽減と根圏微生物の活性化を図ると生育が良くなるとの報告がある。原液や高濃度液はホルムアルデヒド等の有害成分を含み刺激臭も強いため、取り扱い時はマスク・手袋を着用する。作物への散布もいきなり高濃度にせず、様子を見ながら徐々に濃くすると安全。

重曹+石鹸水(重炭酸ソーダ液)

重曹(炭酸水素ナトリウム)5gと無添加石鹸または台所用中性洗剤1~2mlを水1Lに溶かして混合液を作る(約0.5%濃度)。これをさらに必要に応じて倍以上に薄め(濃度0.1~0.2%程度)、霧吹きで葉の表裏に散布する。病斑部や葉裏を重点的にスプレーする。※重曹濃度が高いほど効果は強いが植物への負担も増す。

重曹水はアルカリ性の性質で酸性条件を好むカビを殺菌し、植物の病気(うどんこ病、さび病、灰色かび病など)を抑制する。500~1000倍程度(重曹濃度0.1~0.2%)に薄めた液を散布すると、葉のうどんこ病斑点の広がりを抑えることができるとされる。石鹸を少量加えることで液に粘着性が出て葉面や害虫に付着しやすくなり、展着剤として効果を高める(石鹸水自体にもアブラムシやカイガラムシなど軟体害虫の外骨格を溶解し窒息させる殺虫効果がある)。なお重曹は食酢と並び安全性と防除効果が公的に認められて特定農薬に指定されている。

例: イチゴ葉のうどんこ病やトマト葉の灰色かび病に対し、重曹0.1%+石鹸の水溶液を週1回ほど散布して予防。キュウリやウリ科野菜のベト病・うどんこ病対策としても用いられる。ただしウリ科作物では品種により薬害(葉の黄斑や萎れ)報告もあるため、初回は低濃度で一部区画に試験散布して様子を見るなど注意する。重曹スプレーは治療というより予防的な位置づけで、病斑が拡大する前から定期的に散布すると効果的。金属に触れると腐食する恐れがあるので調製や保管の際は容器素材にも留意。

ミント液(ハッカ油スプレー等)

ペパーミント、スペアミントなどハッカ属の葉を一握り程度沸騰水1Lに入れ、そのまま蓋をして冷まし有効成分を抽出する。濾してスプレー容器に入れ、葉や株元に噴霧する。市販のハッカ油(ハーブ精油)を利用する場合は水1Lに対し数滴(目安5~10滴)を加え、液が分離しないようエタノール小さじ1杯か台所用液体洗剤数滴を混ぜて希釈液を作る。

ハーブ類の強い芳香成分には害虫を遠ざける忌避効果があり、特にミント類に含まれるメントールは昆虫の嗅覚を刺激して不快感を与える。ペパーミントやスペアミントはアブラムシ、カメムシ、ハムシ(葉虫)、アオムシ(モンシロチョウ幼虫)、アリなどを寄せ付けないことが知られている。またミントの香りは一部の天敵生物(カメムシ科の捕食者など)を誘引する効果も報告され、害虫防除を助ける可能性がある。ミント液自体に殺虫成分はないが、害虫の摂食や産卵を抑制する補助剤として働く。

例: キャベツやレタスの周囲にミント液を散布し、モンシロチョウの産卵やアブラムシの飛来を忌避させる。畑ではハーブのミントを野菜と一緒に植え、コンパニオンプランツとしてその香りで防虫することもある。ミントスプレーは即効で害虫を殺すものではないため、他の防除法と組み合わせて使うと効果的。抽出液は日持ちしないので使い切る量だけ作り、精油から調製した場合も長期保存は避ける。人畜には無害だが、ハッカ油は高濃度だと刺激臭が強いため、室内や温室では換気しながら散布する。

ニンニク液(大蒜エキス)

ニンニクの鱗片を3~5片ほど潰して水1Lに一晩浸け、翌日濾過して抽出液スプレーとして使用する。もしくはホワイトリカーや焼酎500mlに刻んだニンニク3~4片と唐辛子ひと掴みを2週間程度漬け込み、濾した原液を水で50~100倍に希釈して散布する方法もある。散布は夕方~夜間か早朝など涼しい時間帯に行う。

ニンニクに含まれる硫黄化合物(アリシン等)には強力な殺菌・防虫効果があり、古くから天然農薬として利用されてきた。独特の匂いが害虫忌避剤として働き、アブラムシなどの吸汁性害虫を寄せ付けず、食害する青虫(チョウ類幼虫)やハダニにも接触すると殺虫・防除効果を示す。抗菌作用により灰色かび病菌や細菌病の増殖を抑える効果も期待され、総合的な病虫害軽減に役立つ。

例: トマトやナスの葉裏にニンニク液を散布してアブラムシ・ハダニの繁殖を抑制する。キャベツ類では生育初期に苗へ噴霧し、モンシロチョウの幼虫(青虫)やアブラムシの発生を予防する。ニンニク液は天然由来で食品にも影響少ないが、臭気が強いため収穫直前の散布は避ける。また調製時や散布時は匂いが衣服や手に残りやすいので手袋等を着用する。作り置きすると劣化するため使う分だけその都度作成し、涼しい場所に保管する。

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